「なんで、また泣いてるんですか」
水城くんの言葉がわたしの涙腺をまた緩ませたみたい。
また、涙が溢れていた。慌てて手で拭う。
「だって、そんな寂しそうな顔して言うから。ついもらい泣き?」
「もらい泣きって、俺泣いてないじゃないですか」
「そうなんだけど。なんかそんな感じの気分なんだもん」
きっと、水城くんの心のなにかに共鳴したんだと思う。
その、〝なにか〟は、なんなのかわからないけど。
水城くんはわたしの顔を一度見たあと、黙って前を見つめた。
「あーあ。あれだね、わたしの変な姿ばっか見てるね、水城くん」
鞄からティッシュを取り出して洟をかみながら言った。
「はい?」
「だって、ほら吐いたり泣いたり。出してばっかだよ、わたし。なんだかわたしたち、熟年夫婦みたいだね」
「確かに、ゲロ処理は熟年夫婦じゃないと出来ないっすね」
「わああっ。言わないで、もお」
自分から言っておいて無責任に片耳を塞いで聞こえないふりをした。



