みんな、ときどきひとり


「誰似なんですか?」

「うーん。父親?」

「ふうん」

「わたし、たぶん身長が低くてもきっと告白出来なかったんだろうな」

ポツリとこぼしてしまった。

「身長、気にしてるんですか?」

「そりゃあね。亮太と並ぶときすごい嫌だった」

無意識に、ペットボトルを持つ手には力が入っていた。

「身長なんかどうでもいいと思いますけどね」

「えー。気になるよ。女の子は。水城くんは好きな子の身長とか気にならない?」

「わからないですね」

遠くを見つめて、素っ気なく言った。

「なにそれ?その人によるってこと?」

「そういうことじゃないんですけど」

そのまま目線は遠くを見つめ続けている。

ゆっくりとした口調はそこから言葉を紡いでいっているようにも感じた。

「人を好きになったことがないから、わかんないです」

「えっ?好きな人、いたことないの?」

「ないですね。だから、好きって感情がわかんないです」

「好きって。ええと、見てるだけで苦しかったりとかドキドキしたりとかないの?」

自分で言いながら、下手くそな説明だと思った。

好きってなんて言えばいいんだろう。

みんな、同じような気持ちになるのかな。

「ないですね。たぶん、人を好きになることなんてないんじゃないかと思います」

目線をわたしに移して、少し微笑んだようにも見えた。

その水城くんの瞳はどこか寂しそうに揺れていた。

それは辛い恋をしたから、誰も好きにならなくなったのかな。

それとも、好きな人に巡り会うことが出来なくて気づけないだけなのかな。

あっ、でも人を好きになったことがないって言ってたから後者があっているのか。

どうなんだろう。

どうしてなんだろう。