みんな、ときどきひとり






「先輩、結構打ちますね」

130キロのボールを見事に打ち返すわたしにネット越しから水城くんの冷静な声が聞こえた。

これじゃ、男なんて出来ません。

きっと、梨花だったら、亮太と一緒にいた女の子なら打てなくて可愛いとか思われるんだろうな。

向かってくるボールを見つめながらそんなこと思った。
 
カコン。

だけど、いいんだ、別に。

カキン。

打ったボールはどこまでも伸びていく。






「すっとした。汗かいちゃったよ」

「はい」

打ち終わったわたしにジュースを手渡してくれた。自販機の横にあるベンチに2人で腰をかける。

「水城くん、やらないの?」

「あとでやりますよ」

ジュースを一口飲みこんだ。ペットボトルの冷たさが心地よい。

「隣でやってる人より打ってましたね」

隣では110キロのボールを何度も空振りしている中年のおじさんが見えた。

「ほんとだ。じゃ、プロにでもなろうかな。女子プロ野球……ないか」

「女子プロならあるんじゃないですか?」

「それって、女子プロレスラーでしょ?そうそう、こんなに体格いいしね、って……好きで、こんな身長になったわけじゃないよ。遺伝です、遺伝です」

なにが悲しくて乗り突っ込みしなきゃいけないわけですか。