みんな、ときどきひとり


「忘れたい。亮太のこと好きだってこと」

「告白するより、難しそうですね」と、水城くんは言った。

本当に、そうかもしれない。

そんなことが出来るなら、きっとわたしは今日泣くことなんてなかったはずだから。

「よっし!水城くん、遊ぼう!カラオケ行こう!もう、今日は失恋ソング歌いまくってやる!」

もうこうなったら、落ち込んだ気分を払ってやると開き直るしかない。

「俺、苦手なんで、パスで」

わたしは逃げようとした水城くんの腕を掴んだ。

「食堂で声かけたんだから、最後まで責任を」

「いや。そんな責任は俺にはないです」

「薄情者。帰るなんて。今日くらい……今日くらい、いいじゃん」

少し泣きそうな顔をしてしまったかもしれない。

彼は大きな溜め息を吐いてから、「わかりましたよ」と、しぶしぶ承諾してくれた。

「やった!ありがとう」

大袈裟に喜んでみせた。

でも、一人ではいたくなかったから、本当にそれくらい嬉しかったんだと思う。

カラオケに行くと「歌いません」と言った彼は、ジュースにしか手をつけなくて、「先輩、この歌、なんですか?」と、わたしがいれた曲に疑問をぶつけてくる。

「演歌。失恋と言えば、演歌でしょ?」

目だけで、何かを訴えている。笑いもしないけど、文句も言わずにただ座っていた。たまに欠伸をしたり、明らかにつまらなそうな顔をして。

カラオケを出ると、「満足しましたか?」と彼は訊いた。ふと視線をあげると、ビルの屋上にある緑色のネットが目に付いた。バッティングセンターか。

「ねえ、あそこ行こ!」と、水城くんを誘った。