「大丈夫ですよ。気づいてないですよ。さっき一緒にいた人は」
だけど、水城くんは相変わらず無表情のままだった。
「は?」
「気づいてないですよ。先輩が好きだってことも」
水城くんが言った言葉にわたしはどうやら動揺してしまい、気丈に振舞おうにもかぼそい声で答えるのがやっとだった。
「えっ?好きじゃないよ」
その答えを聞いていないかのように、続けて「たぶん、気づいてないのはあの人くらいですよ」と言った。
「亮太のことなんか好きじゃない」
はっきり言えた。次はちゃんと声になった。
けれど。言った後に涙がこぼれてきた。
涙をこらえようと手で何度も押さえたけど、わたしの手じゃ押さえ切れないのか、次々と頬を伝ってこぼれてきた。
気づいたら、両手で何度も涙をぬぐっていた。
それでも涙は止まらなくて、頬を何度もつたって降りてこようとする。
それを何度もわたしの手で受け止め、こぼれる。
なんで。なんで。今更、こんなに涙が出てくるんだろう。
梨花と付き合ったときだってこんなに涙は出なかったのに。
なんでだろう。わからないけど、止まらない。
わたしは泣きたくて仕方なかったのかな。
それさえ気づけなかったのかな。
水城くんは、わたしに優しい言葉をかけるわけでもなく、ただ黙って隣にいてくれた。
だから、わたしはわたしの気持ちのまま、ただうずくまって泣いていられたのかもしれない。



