そのときだった。
「先輩、すみません」
こぼれそうになった涙を誰かの声が抑えてくれた。
「えっ?」
その声の持ち主は、水城くんだった。
「ちょっと、今大丈夫ですか?」
「あ、うん」
亮太はそんなやりとりを見て、どうした?って顔をしたけどすぐ笑顔になってわたしに手を振った。
学食を出て、上履きのまま校舎の裏へと回る。昼休みだからか、誰もいなくて、階段に2人で座り込んだ。
涼しい風が一度だけ吹いて、水城くんの黒髪を優しく揺らした。
「なにかあったの?」
沈黙を破るように私が訊く。
「なんとなく言っただけです」
「えっ。なにそれ?」
「学食に行ったら泣きそうな人を見つけてしまって。思わず声をかけました。そんな感じです」
それってわたしのことかと思いながらも、わざと知らないふりをした。
誰にも気づかれたくなかったからだ。
「何それ?うける」
かろうじて、少し笑えた。



