「つか、百歩譲ってあんたが死神だとして、俺を死神にするとして、なんで過去に戻るんだよ?」
別に戻んなくてもよくねぇか?
イケメン……レニはぱたん、とファイルを閉じると俺に目を向ける。
「死神になるには、現世への未練を全くなくさなきゃいけねぇんだ。
ほとんどの人間が『あれがしたかった』『あれが食いたかった』『子供が』『孫が』etc、etc……と複数の未練を持ってあの世へ逝く。
“ほとんどの人間”以外の少数派の人間でも、誰しも『生きたかった』という未練を持つ。
だから死神にできるのは本当にごくわずかな人間だけなんだよ。
……ま、天使どもには元人間な俺ら死神は“無関心で冷めた人間”って言われてるけどな」
現世? 未練? 天使?
頭の中がこんがらがる。
でも疑問は一つ。
「俺は未練がねぇってこと?」
そう笑顔を引き攣らせながらいうと、「アホか」と頭を叩かれる。
不思議と痛くはない。
「お前の未練は珍しいことに一つしかない」
「?」
頭の中で?が踊り舞う。
そんな俺の脳内を知ってか知らずか、レニは言い放つ。
「『宮戸 那由多が自分を殺した意味を知りたかった』その未練解くために過去に戻って知ってこい。
宮戸 那由多がお前を殺した理由を」


