俺は真っ暗な右も左も分からないところに佇んでいた。
……え、ここどこ?
恐る恐る右足を踏み出すと、ピチャン、と音が鳴る。
下は水場なんだな、と思うと、俺はキョロキョロしだす。
俺だけが生きている世界のようだ。
……あれ、俺って死んだよな?
え、殺されたよね!?
マジでここどこ!? 何!? え!?
一人、挙動不審になってあわあわしていると、何処からか、水音が聞こえてくる。
─ピチョン
─ピチャン
─ピチョン……
明らかに近付いてくるんだけど、どうすればいい!?
ジッと音がする方を見詰めていると、段々姿を表す。
黒い髪、黒い服、黒い靴。
右手にある白いファイルが目だって見える。
長い前髪のせいで顔は分からないが、端麗なことは分かる。
男は俺の一メートル位前で立ち止まると、前髪をかきあげて俺を見る。
瞳は綺麗な赤で、それよりもなによりも……
「……イケメン登場!?」
イケメンだった。