「今日も来るの? 誠人さん」
「そう……やってらんない」

メロンパンを奢って以来、週にニ回程私の大学にやってくる。
暇すぎでしょ。

「大手に就職決まってるし、時間あるんだよ」
「性格の悪さ面接で出なかったのかしら」
「そうはゆーけど」

美音はにやけ顔で見てくる。
視線を逸らすと、声に出して笑われた。
理由はわかっている。
強引に誘われてメロンパンを食べた後もあいつと一緒にいる私を勘繰っているに違いない。
断るとあることないことで脅されるから仕方なくついて行っているだけ。
あー、もう、そんな風に笑うならはっきり聞けって言うの!

「で、好きなの?」
「はっきりしすぎ……」
「ん?」
「好きなわけないでしょ。俺様だよ? 強引で自己中で自意識過剰で、それから……」
「はいはい。随分楽しそうに話すねー」
「だから、私は義美さんみたいな、」
「礼子! あんた何回優しいだけの男に騙されてると思ってんの! 目を覚ましなさい!」
「……急にどうした?」
「この前読んだ漫画で似たような場面があったから真似してみた」

えへへ、と悪びれた様子もなく誤魔化されて、そんなことだろうと思ったとは言わずにおいた。
美音とはそういう奴だ。もう慣れた。
今日もあの俺様は来るらしい。
別に待ってないよ。
美音とのお茶を楽しんでいるだけ。
帰るまでにあいつが来たら付き合ってやるだけ。
そう、それだけ。

「よし、じゃあ、そろそろ帰るわ」
「待った。たまには美音があいつの相手を…」
「誠人さんの相手は礼子にしかできないよ。それに私、三次元には興味ないし~」

それならなぜ、友達には勧めるのか。
いい加減すぎるだろ。
はー、と深いため息を吐きながら、ハーブティーを口にした。
うちの学食の夕方はわりと静かだ。
本でも読もうかとバックを手にした時に学食が騒がしくなる。
……来た。