「礼子ちゃんは誠人のことどう思ってるの?」
「どうって……」
「じゃあ、俺のことは?」
「……素敵だと思います」
「好き?」
「え?」
「誠人と初めて会った時、俺みたいな優しい人~って言ってくれたよね」

思い出してカッと頬が熱くなった。

「あ、あれは……」
「好き?」

義美さんが顔の距離を縮めてきて、思わず手で胸を押して突っぱねてしまった。

「すいません。でも、私が好きなのは、」
「何やってんだ」
「っ、」

低い怒気を含んだ声。
顔を見なくたってわかる。
言い訳を探さなきゃ。

「迫ってたの。見ればわかるでしょ?」
「義美さ「誠人より俺みたいな男が好きなんだって。素敵って言われたよ」
「それは……」

言ったけど。でも、そういう意味じゃなくて。
恐る恐る俺様を見上げると、私を睨んでいる。
そんな顔初めてで、怯んでしまう。……泣きそうになる。

「礼子ちゃんのこと好きだよ。付き合う?」

私と俺様の間に入っていつものように穏やかに笑うから、思わずほだされそうになる。
手を伸ばしかけて、その手は強い力で引っ張られた。

「お前に礼子は扱えねぇよ」

手首を潰される程強く掴まれて、眉をしかめると顎を持ち上げられてキス、された。
長く見せつけるように。
私はまたしても目を瞑るタイミングを逃して、俺様を見ていると、彼は時々目を薄く開けて、義美さんを睨んでいた。

「誰にも渡さねぇから」

私を見て、言いながら抱きしめてくれた。
嬉しい。幸せ。泣きたい。もっと近づきたい。
胸がいっぱいで、何を返せばいいかわからなくて、抱きしめ返すことしかできない。
彼も離さないように力強く触れてくれる。
肩越しに義美さんが部屋を出ていくのがわかった。

「義美さんより、あんたみたいな俺様の方が好きみたい。信じられないことに」
「こんな時まで生意気だな」
「こんな時だって俺様だったじゃん」
「そんな俺が好きなんだろ?」
「うん。……好き」

好きだよ。
もう誤魔化したり、気のないフリしないから。
態度で示してくれるのは嬉しいけど、やっぱり言葉が欲しいの。
黙ってしまった俺様に頼んでみようと顔を覗くと、真っ赤な俺様。……え?

「もしかして、照れ「うっせぇな」
「いや、別に隠すこと「違ぇ」
「……照れてる」
「黙れ」

顎を掴まれてじっと見つめられる。
その目が真剣であまりにも眼力が強かったので目を逸らした瞬間、唇に噛みつかれる。
徐々に優しくなっていくキスにとろけそうになるといきなり止められて、

「愛してる」

さらりと呟かれた。




 ヤキモチはわかりやすいけど、やっぱり一枚上手
 (悔しい。……でも、嬉しい)