「そっかー! おめでとう!」
「信用していいのかなぁ…」
「キスされたんでしょう?」
「でも、好きだとか言われてないんだよ」
「あー…そういえばあんたの元カレ達って無駄に愛を囁いてたもんね」
「無駄って何よ」

態度で示せばわかるって思っているのかもしれないけど、あの俺様は。
わかるわけないじゃん。
一昨日は、その、気持ちが盛り上がってああなっちゃったけど、
好きかもしれないって思ったけど、
やっぱり俺様は理解できない。
それに……、

「あれから音沙汰なしなんだよ」
「昨日一日くらい何を……。数日連絡ない日今までもあったでしょう?」

私は頭を振った。
なかった。どんなくだらないことでも、喧嘩腰のメールでも毎日来ていた。

「……しょうがないな。お兄ちゃんに今日会えるか聞いてやろう」
「ありがと」
「いや、まさか、礼子がリアルに俺様にハマるとは思わなかったから観察させてもらうよ」
「ほんと義美さんと大違い」

美音は電話をかけようとしたスマホから視線を私に戻した。

「まだお兄ちゃんに未練あるの?」
「未練っていうか……理想かな。いつも穏やかでにこにこしてて優しくて」
「ありえない! 言っとくけど私にそっくりだからね!」

なぜか怒った美音はスマホ片手に食堂を出ていってしまった。
まるで美音が優しくないって言われているように思えたのかな。
バッグ残したままだから、帰ってきたら謝ろう。

電話を終えた美音は上機嫌で私の謝罪をあっさり受け入れて、カラオケに行こうと言い出した。
美音はカラオケ大好きだ。
美音のアニソン聞きながら俺様に会うのかと思うと少しだけ憂うつ。
……気がひけるなぁ。
美音の話によるとあいつは私が来ることを知らないらしい。
サプライズ、というより、美音が俺様の驚いた顔見たいだけだと思う。
つくづく欲望に忠実な友人だ。