一め惚れ

電車に乗り込んで、先輩と向かい合わせになる。

…なんだか落ち着かない。

しかも、妙に視線を感じる…。


「結城さんって、こうして見るとかわいいんだね」

「ひえっ」

全く予想していなかった言葉を耳にして、声が漏れる。

もっとなんとかならなかったの、あたし。


かわいいんだね…かわいいんだね…あたしの頭は、都合の言い部分を何度も繰り返す。


脳内保存完了。

「眠り"姫"、なんて言われるのも頷けちゃうなあ…」

「…」


褒め言葉ではなかったらしい。

その言葉を聞いて、旭妃はまたも噴き出す。

「そ、それは…誰が…っ」


笑いすぎで何をいってるかわからないまである。


「ああ、言い出したの?書記の倉本だったかな。あいつ、かわいい子には見境ないんだよね。気を付けるんだよ、二人とも」


先輩のその言葉に、あたしと旭妃は頬を紅く染める。


真に受けるわけではないけれど、嬉しかった。


そんなことをさらっと言えるなんて、相当手慣れてる人なのかもしれないけど…
今は気にしない。


「先輩も、めちゃめちゃかっこいいですよ!」

「あはは、お世辞、ありがとう」


軽く流されるけど、お世辞じゃないんだよなあ。


実際、さっきからずっとお姉さん方からの視線を感じているし。