一め惚れ

送っていくっていうのは、まあ駅までだろう…そう思うと切なくなった。

あたしはまだ、なにもしていない。


「水城さんは、中谷の駅で降りるのかな?」

「あ、はい。この子…光履も同じ行き先なんです」

「そっか。なら、同じ電車だね」


こ、これはまさか…電車も同じ?

「良かったわね」

旭妃に声をかけられて頷くけど…あれ?

どうして先輩は旭妃の家の最寄り駅なんか知ってるんだろう。


あたしを見て気づいたのか、旭妃がそっと教えてくれた。


「中学の時、一度委員会で同じになったのよ」

旭妃は中高一貫のこの学校で中学から通っているから、ということは先輩もだということか。

それにしても、一度一緒になっただけで覚えてる先輩ってすごいなあ。


「ほら、いこっ」

旭妃がバンッとあたしの肩を叩いて先輩を追いかける。


お嬢さん、言ってくれなかったらそのまま先輩を見失っていた可能性はあるけど…痛いです。