突然、すぐ後ろから怒鳴ったかのような
声で話しかけられたので僕は思わず
驚きのあまり身震いしてしまった。
ふと、振り返ってみると少し怒ってる
ようで呆れた顔さえもしている母親の姿
がそこにあった。


「あんた、こんな所でなに油売っているのよ…?全く、あんたの結婚式だって
いうのにあんたがそんなんじゃ
〝梨沙〟さんが可哀想でしょうが。
ーごめんねえ、陸人くん。
折角二人で話しているところ
悪いんだけど、ウチの子まだ
準備終わってないから
連れて行かせてもらうわねぇ。
また後でゆっくり話でもして
あげてちょうだい。
ほら!早く行くわよ、ジュン!!」

一通り嵐のように母親が喋った後、
僕はフーッと、口の中で溜めていた
煙を吐き出し、その中途半端に
長い煙草の火を灰皿に乱暴に
こすりつけ、
わかったよ、今行くとだけ答えた。