「いいから早くおはなししようよ。
私、もう待ちくたびれちゃったわ。
私に聞きたいことがあるんでしょ?
ほら、ちゃんと聞いてあげるから、
おいで?」

彼女はそう言って綺麗な黒髪を
たなびかせながら、僕を見つめた。
その目や言葉は今、この状況においては
まるで誘惑でもされているかのように
聞こえる。
理性を保たなければ直ぐにでも
襲ってしまいそうであった。


「どうして、僕の結婚式に来たの?」

僕は鋼のような理性で彼女の誘惑を
一切押し殺し、あらかじめ用意していた
質問をぶつける。


「それは、さっきも言ったでしょう?
おば様がー。」

「母さんは、君のことを知らないと
言っていた!それに僕は君に招待状を
送っていなかったはずだ!
だから、いつ、どこで、やるかなんて
わかるはずないんだ!
…そのことを踏まえた上で
もう一度聞くよ。
どうして僕の結婚式に来たの?」

「…」

流石の彼女もこのことには
何も言えなかった。
僕が若干怒っているような口調で
論破していったからであろう。

実際には全く怒ってはいないのだが、
焦ってはいる。
何しろ時間がないのだ、これが夢だと
わかっていても早く答えが知りたい。


「ん〜、そこまで
わかっちゃってたんだね。
そうだなあ…。
じゃあ、次は、〝きまぐれ〟って
ことにしておこっかな。」

「…は?」