彼女は、机に腰を掛けながら
にんまりと笑みを浮かべた。
またあの、人を試しているような
表情である。

周りには机や椅子が一定間隔でそこら
一帯に配置され、前にはよほど優秀な
日直が担当したのだろうか、できた
ばかりとまではいかないが、
それでも十分すぎる程、ていねいに
消されている黒板が貼り付けてあった。
だが、やはりどれも使い古されている
ためか、ほとんどがくたびれているか
のように見える。
もはや、ここが通っていた高校の教室
だというのは、皆まで言わずとも
わかるだろう。


「…そんなにここが気にいった?
まあ、高校生の頃の教室に久しぶりに
来たんだもの。夢ってわかってても
喜んじゃうよね。」

「…ここが夢の中だって言うのは
何となくわかるけれど、どうして
君がここにいるの?」

「どうして?って、あなたが私を
〝呼んだ〟んじゃない。」

「僕が?」

「そう…。ここはあなたの夢の世界…。
あなたが望むものはだいたい叶える
ことができるわ。
…まあ、私は〝自分から〟
ここに来たし、今は〝させる〟気も
ないけどね。」

「…?」

言ってることの意味が
よくわからなかった。
どちらにせよ、天原と一緒に
いられるのだから悪い気はしない。

とりあえず今、思ってることを
口に出してみようと思う。