雪…。

ふと、窓の方を覗くと雪がこれでもかと
言うほど降っていた。
そのせいか、この〝建物〟自体、
全体的に寒く感じ、ふっと息を吐けば
白いもやが出てきそうである。
こんなにも寒い日には、家で
こたつの中にでも入り、ぐつぐつと
煮えたおでんでも食べながら、
一杯引っ掛けるに限る。
それでいて側で天原が酒を注いで
くれたのなら、なおのこと幸せだ。

だが、現実は想い描いているほど
上手くはいかない。
…というより〝ここ〟はおそらく現実
ではないと言えるだろう。

なぜなら、目の前にあれほど望んでいた
〝少女〟がまだあどけなさが残る姿で
こちらをじっと見つめていたからだ。

ーそれは、正に高校生の頃の天原 瑞稀
である。


「天原…。」


「〝夢〟の世界へようこそ、成宮くん。
それじゃあ折角だし、パパッと
お話でもしちゃいましょうか?」