「ごめん、少しお手洗いに。」

僕はそう言い残しその部屋を出て行き、
建物をぐるりと歩き回る。
別に本当にトイレに行きたかった
わけではないが、
一人にはなりたかったのだ。

…天原 瑞稀とは高校時代の
同級生であるが、僕たちは特別
仲が良かったわけでもない。
授業中に隣の席になったら
少々話を交えたりする。
休み時間 リクと会話をしている時などに
ときどき会話に入ってきたりする。
ただそれだけの仲である。

彼女は学校で一、二位を争う
マドンナ的存在であった。
最初の頃はかなり近寄りがたい雰囲気を
醸し出しお高くとまっているイメージが
あったが、本人が途中で飽きてしまったのであろうか?
ある時から急に普通の女の子のように
振舞ったり、冗談を言ったり
したりして、徐々にクラスにも
溶け込んできていった。
ただ普通の女の子とは違い、
有無も言わせない独特の
色気のようなものは出していた。

当然、彼女を狙う男子も多く、
僕もその内の一人である。
…結局、勇気を振り絞ることもできず、
終わってしまったのだが…。