「そう。態々有り難う。泉も喜ぶわ。さ、どうぞ入って。」
上品な女性、『泉さん』のお母さんはなんの疑いもなく僕を招き入れてくれた。
もう少し危機感、というか警戒心を持った方がいいのではないかと思ってしまう。
まあないお陰で『おかしな子』扱いされずに済んだのだが・・・
「階段を上がって左側にあるのがあの子の部屋なのよ。」
脱いだ靴を揃えて少し端に置き、『泉さん』のお母さんの後をついて階段を登る。
「いいんですか?勝手に入って」
この家に来る為に登った階段を思えば、短く緩やかで、優しすぎる階段だ。
「ええ。あの子なら怒らないわ。」
そう言って『泉さん』のお母さんは階段の左側の部屋の前で止まった。
「ここが泉の部屋よ。飲み物持ってくるから待ってて。」
そう言って『泉さん』のお母さんは階段を足早に降りていった。
まさか部屋の前で放置されるとは思っていなかったので、思わず「困った。」と呟いてしまった。
いくらいいとは言われても、名前すら知らなかった女性の部屋に入るのは流石に躊躇う。
しかし、このまま部屋の前で突っ立っているのも気が引ける。
なので僕は「すみません。お邪魔します」と言って部屋のドアを開けた。


