「…大丈夫。」
「えっ。」
「だって、リィトは私の友達だから。」

 そう言ってララはリィトの方を向いた。

「リィト、魔法勝負しよう。あなたの心の闇が無くなるまで耐え切れたら私の勝ち。耐え切れなかったらあなたの勝ち。あなたを中にある闇、私が消えてでも受けとめてあげるから。あなたの中の闇が全てなくなったらきっと元の姿に…。」
「………。ダメだ。ララ。離れて。」
(リィトの意思で体が動いてない。)

 『暴走』は自分の意思でやっているのではない。体が勝手に動くような状態になっている。リィトはそろそろ『暴走』するだろう。リィトは手を前に出して、魔法を出す体勢になっている。おそらく自分の意識ではない。

「いやだ。私、あなたを助けたいから。」
「……っ。」
「いつでもいいよ。」

 バサッ。

 ララの羽が広がる。リンと同じ『シャイト』の羽だ。

「リィト、大好き。」
「……ダメだよ。いやだよ!!」




 2人が魔法を出しあう。




「……すごい。」
「…うっ。重い。」

 ララがいなくなってから、ずっと苦しくて不安だったに違いない。その分、放出した魔法は大きく、黒く、迫力があった。

「その悲しみ、苦しみ、全部私が受けとめる!!」

 ララの覚悟も大きいのだろう。真っ白できれいな鋭い光を放出している。

「やめて!お願い!!」
「………ああああぁぁぁあ。」

 バチンッ。

 2人の放出が止まった。
 リィトは気を失い、倒れていた。そして、白い光に包まれている。
 リンの方も同じく気を失っていた。

「……リン。……っ。まだダメか。」

 まだうまく体が動かない。樹に叩きつけられた時の反動がまだ残っていた。

『大丈夫ですよ。リンちゃんは寝ているだけです。』
「…ララ。」

 リンの横にララは立っていたが、透けていた。後ろの景色がぼんやりと見える。

「無理しすぎ。リィトが、悲しむ。」
「君もね。そんなボロボロになって、リンちゃんが起きたら泣いちゃうよ。リィトにもわざと攻撃しなかったくせに。」
「まぁな。笑」
「…ほんと。私たちバカだね、2人して。」
「ほんと。でも、……。」
「「自分が傷つくより、誰かが泣いている姿を見る方が辛い。」」

 お互いの顔を見て笑った。

「そっくりだね。私たち。」
「そうだな。」

 こうして話しているうちに、ララはどんどん透けていった。

「……消えるのか?」
「わからない。消えるかもしれないし、このままこの世界の住人として生きるかもしれない。今もこうしてここにいるわけだしね。でも、できることなら、この世界でリィトみたいに間違った道を進んでしまった人たちを助けてあげたいなぁ。もう誰もリィトみたいな思い、してほしくないから。」

 ララが俺の方に近づく。

「本当にありがとう。((チュッ」
「えっ……。」
「ファーストキスは惜しいけど、君にはリンちゃんがいるからね。笑」
「……。」
「あと、リンちゃんに教えておいたよ。君の名前。」

 ララはリィトの方に駆け寄った。そして、俺に向かって笑顔で手をふってきた。

「じゃあね。」


 そう言うと、ララは消えてしまった。


 その場に静寂が訪れた。







(俺、今、ほっぺに、キス、された…?)

 頭が真っ白になった。
 そして、とてつもない眠気に襲われた。