彼がとっさに光にふれようとするのを私はとめた。
「待って!」
「!!?」
「お願い!まださわっちゃダメ。」
------- Boy's side ----------------------------------------
俺が光にふれようとした。その時、
「待って!」
「!!?」
「お願い!まださわっちゃダメ。」
リンが俺の手を掴もうとした。でも、たしか、リンの右手って……。
「あっ。」
「!!」
俺の手を掴もうとしたみたいだが、右手がすり抜けて前に倒れそうになるリンをとっさに支えた。
「……リン、大丈夫?」
「…………。」
パキッパキッ
「あっ、リンの羽が消える。」
この世界で羽が消えるとは、魔力切れを意味している。きっと、初めての魔法で疲れてしまったのだろう。
よく見ると、リンは目をとじている。気を失っているようだった。
「リン、ありがと。」
「わー。ラブだね!♡♡♡」
「えっ!!/////」
「(-´∀`-)♪♪」
「うわああぁー。Σ(゚Д゚lll)」
後ろから声が聞こえて、振り向いてみるとそこには小さな妖精(ピクシー)がいた。
「…………魔法、成功したんだ。」
落ち着きを取り戻してから、魔法が成功したとわかったので安心した。
でも、安心とは違う別の感情が自分の中にあることも何となく自覚していた。
「初めまして!僕セインっていいます!」
「僕??」
「あっ、女の子ですよ。♡♡」
俺達が魔法で造った妖精(ピクシー)はセインと名乗った。琥珀色の長い髪に左側の髪の一部だけが黒髪になっている。そして、蝶のような形をしたきれいな羽を持った女の子だった。
魔法が成功したはずなのに、素直に喜べなかった。羽があること、女の子であることを除けば昔の自分の姿と似ていたからだ。
(長い髪、自分のことを僕って言うところ、細い腕、……。似てる。)
つい顔に出てしまったのだろう。
「…僕の姿、嫌??」
「………。」
何て口にすれば良いのかわからなかった。正直、昔の楽しいとか嬉しいなどという思い出はほとんど無いに等しかった。唯一、リンと出会ったことが良い思い出だろう。
「………ごめん。」
やっと言葉に出たのがこの言葉だった。
「僕のことは気にしないで下さい。僕はあなたの記憶、知ってるんですから。」
「えっ、何で??」
「僕が分身(コピー)だからです。あなたのデータを元に僕が造られたんです。」
俺の身体が光ってた時にセインが現れてきたのを思い出した。あの時にデータがコピーされたのだろう。
「……アイツは、俺がセインを造るとわかって、この世界を創りあげたのか…。」
「どうなんでしょうね。」
「………。」
アイツとはこの世界を創りあげた張本人のことである。俺はアイツが嫌いだ。アイツが創りあげたこの世界も。
でも、こうして出会えた人達は嫌いじゃない。リンやセインのように。
「やっぱり、この姿やめましょう!」
「えっ、大丈夫だって。」
「そんな顔を見てる方が辛いです!」
「うっ……。」
「ここ、キューーッてなってます!!」
セインが眉間に指を指してシワを寄せた。顔に出さないつもりでも無意識のうちに出てしまっているみたいだ。
「ごめん。」
「何で謝るんですか?」
「いろいろ、ね。」
「それより、まず移動しましょう!」
「うん。」
俺はリンを抱えて羽を広げた。
そして、空に飛んだ。
「どっちに行くんですか?」
「たしか、あっちに……………。」
俺は空を飛びながら、ずっと心の中で謝り続けた。
(セイン、ごめん。せっかく生まれてきたのに。ごめん、ごめん、……………………。)
