color



 数日後、またその子がきてくれた。
「おはよう!誰かいるの?」
(大丈夫。この前、一緒に話そうって決めたんだから…。話さなきゃ!!)
「……おはよう。」
 勇気を出して声をかけた。
「あっ!声聞けた!!よかったぁ。おはよう。(*´ ˘ `*)」
「ねぇ。名前、教えて。」
「私?鈴音(すずね)。みんなからは[リン]って呼ばれてる。」
「どうしてリンって呼ばれてるの?」
「私の[鈴]って字が[りん]って読み方ができるからだって。」
「そうなんだ。………あのさ、僕もリンって呼んでも…。」
「もちろん!いいよ。ねぇ、あなたの名前は何ていうの?」
「僕は……………。」



 これをきっかけに、リンと仲良くなった。毎日のようにリンは集中治療室のベランダに来て、俺と話してくれた。雨の日はリンの部屋に隠してあるらしい折りたたみ傘をさして、寒い日はコートとマフラーを身につけて、暇さえあればリンはベランダに来てくれた。
 しかし、病院に入院してるということはリンも何かの病気なのだろう。リンが手術をしなければならない時がきたらしい。この頃の俺の髪は前に一度切られてから、肩を少しこすくらいの長さまで伸びてきていた。
「私、目がよく見えないの。今回の手術が失敗すると、もう見えなくなるんだって。成功してもほんの少し見えるようになるだけなんだって。…どうしよう。私、手術、怖いよ…。」
 リンの泣いている声が聞こえた。俺は手術なんてしたことはないから、手術が確実に成功するなんて無責任なこと言えない。だから、リンと約束をすることにした。いつもはベットに座りながら話すが、俺は立ち上がって窓の下まで行き、壁に手をあてた。そして、こう言った。
「大丈夫。きっとうまくいく。そして、手術が成功したら、また話そう。いつもみたいに。話したいこと、まだたくさんあるんだ。僕も手術が成功するように祈り続けるから。がんばって、リン。」
「……っん。うん。ありがと。」
 リンはしばらく泣き続けた。俺も涙を流した。リンに聞こえないように泣いた。力が抜けて、壁に手をあてたまま、しゃがみ込む。すると、俺の手から温かさを感じたんだ。冷たさしか感じるはずのない壁を通して。
(この壁が無かったら、リンに会えるのに。)