「あ、福嶋だ」

身軽になった身体でホテルのビーチを縦断するウッドデッキの道をゆらゆら歩いていると、二本の木に挟まれて木陰ができている場所で、福嶋を見つけた。

白地に墨色の英語が丁寧に並んだTシャツと七部丈のスボンを身に纏う福嶋は、赤銅色のサンダルを履いていて。

服装はラフなのに福嶋が身に纏うだけで妙に丁寧なものに見えてしまい、その矛盾が少し面白かった。

「どれどれっ!?」
「ほらあそこ。木陰で誰かと話してる」

木陰の中で福嶋と対面している人は知らない人。

無造作なお団子が似合う福嶋よりも濃い肌の色をしているから、多分現地の人なんだと思う。

「ほんとだ!てか誰あの女!」
「現地の子じゃない?さっすがねー!」
「すれ違い様に呼び止めたと見た!」
「福嶋伝説留まるところを知らずっ!」

私には掴む事ができない福嶋とその人に漂っている雰囲気のラインを越えない様に、何故かみんな私の背中にくっつきながら盛り上がっていてかなり苦しい。

「…なにが?」
「なにがって姫!あれどう見ても告白中だよっ!」

「え」

指でハートを作って福嶋と彼女をその中に入れ込んだ友達の衝撃発言に、何とか漂う雰囲気を掴もうと刮目したけれど。

「ほんっとに鈍感だねー姫。」

やっぱり掴むことはできなくて。

「ほら邪魔しちゃダメだよ。まあどうせあの子玉砕だけどね。」「玉砕じゃなくたって無理でしょどんだけ遠距離よ。」
「みーんな玉砕よっ!だって福嶋の彼女は私の予定なんだからー!!!」

みんなが離れた背中を押されながらも福嶋とその人を見ていると、福嶋が緩やかに頭を下げているのが見えて。

福嶋と私のきょりを示すように、濃く暖かい風が強い桃色の花びらを乗せて間を通り抜けていった。

「(告白されてるの初めて見た)」



小さくなっていく福嶋の背中が、知らない人に見えた。