白雪が戻した冊子を手に取り、抜けているページが無いか確認しながら電気をつける為白雪の横を通り過ぎる。

再び稼動し始めた蛍光灯が、柔らかな光と混ざり合う。

その動作を視線で追ってくる白雪にふと、徳田が白雪達と旅行の買い出しに行くと態々伝えにきたのを思い出した。

閉め切られた窓の向こうから野球部のかけ声が籠って聞こえてくるが、何を叫んでいるのかまでは聞き取れない。

そんな緩やかで静かな教室で白雪は白雪らしくそう言うだろうなと予想していた通りの言葉を風に戦ぐ花の声で放った。


白雪はそういう奴なのだ。

「付き合います。もう決めたから」

自分がやると決めたからやる。手を差し伸べている意識などなく自然に手を差し伸べる。そういう奴なのだ。

「そ」
「うん」


莞爾するその顔に、混ざり合う二つの光とは違う温かな光が灯る。


陽だまりの中で花が開花した様な笑み。

(変わらないな)

こういう表情をしている時は、大抵何かに喜んだり嬉しがっている時だ。


何に喜んでいるのかは分からないが。