階段を登り誰もいない廊下を歩き、先程は辿り着けなかった教室へ入ろうとした時、窓の傍に誰かがいるのが見えた。

その人物は薔薇色と茶色を丁寧に混ぜた様な色の髪を持ち、俺と同じ鉄色の冬服を着ている。

「白雪?」
「わ、」

白雪は薄玉子色のカーテンを掴んでおり、掃除された黒板に書かれた整った文字に白雪が日直だった事を思い出す。

「福嶋、どうしたのそれ」

声を掛けた瞬間こそ肩を小さく弾かせた白雪だったが。

その後はいつも通り風が纏う動きで此方へと駆け寄ってきて、当然の様に紙の山に手を掛けた。

相変わらずこういう行動も何の下心もなしにやってしまえる風の様な奴だ。

「サンキュ」

白雪と俺の足音と短い会話だけが、橙色の光を薄玉子色が和らげる静かな教室内に響く。

白雪は机に並んだ山を一瞥した後、見本の冊子を無気力気味に捲っていく。

「出発前にはあんまり見たくないわね」

それを戻しながら首を緩やかに傾ける白雪の顔は、歪むというより弛緩に近い。