「別にお前から何を聞き出したいって訳じゃないんだよ」

オルロフは巽の肩に、煙草の火を押し付ける。

撃たれてまだ完治していない傷口だ。

巽の表情が、僅かに歪む。

「ただ俺は警察って奴が嫌いでね…当然だろう?食っていく為に商売やってんのに、それを邪魔しやがる…営業妨害だよ、これは。だから」

巽の傷口で煙草を揉み消して、オルロフは吸い殻を投げ捨てた。

「馬鹿な警察官が近付いてきたら、こうして警告してやる事にしてるんだ。商売の世界は厳しいんだよってな」

「……」

微かに巽の呼吸が荒くなる。

それでも、悲鳴は上げない。

こんな犯罪者相手に、呻き声の一つも聞かせてはやらない。

それは、野獣としての矜持だった。