「まぁその話は置いといて」

美奈は着ていた白衣を脱ぎ、椅子の背凭れにかける。

下に着ているのは真紅のワンピースだ。

「私これからお昼食べに行くんだけど。倉本さんもどうかしら?」

「…自分とか?」

倉本が怪訝な顔をする。

自分みたいな愛想もなく会話下手な男と、食事に行って楽しいのかと言わんばかりの顔。

「いいじゃない、1人で食事なんて味気ないのよ、付き合ってよ」

「…自分は1人で食事など慣れているが」

職業柄、空いた時間で食事は済ませる。

ファーストフードだったり、コンビニのおにぎりだったり、駅の蕎麦屋なんてのもザラだ。

四の五の言う倉本を。

「もう!女の誘いを断ろうなんて無粋ね!」

美奈は強引に引っ張って診療所を出た。