「環!」

騒然とする事件現場の高校。

巽は人目も憚らず、恋人の姿を探す。

「巽さん!」

救急隊員によって肩に毛布を掛けられ、温かい飲み物を振る舞われていた環は、巽の姿を見つけて立ち上がった。

怪我はなく、少し疲れているが元気そうだ。

そんな環に、巽は内心胸を撫で下ろす。

「よくよく事件に巻き込まれる女だな、お前は」

悪態をつくのも、そんな安堵の裏返しか。

「そんな事言ってるけど、やっぱり助けに来てくれたんですね」

正直ではない巽の性格など、既にお見通しなのか。

彼の悪態など気にも留めず、環は逆にやり返す。

「俺は刑事だからな」

「そうですよね、警察だから、いつでも助けに来てくれるんですよね」

「…何が言いたい」

「んふふ」

これではどちらが年上か分からない。

上手く環にやり込められて、巽は憮然とするのだった。