松岡の拳が、眼前一杯にまで迫る。

その拳は実際よりも遥かに大きく見えた。

松岡自身の殺意がそうさせるのか、彼に対する畏怖がそう見させるのか。

何にせよ、まともに顔面にでも入れば、その一撃のみで絶命必至なほどの拳だった。

咄嗟に首を捻り、直撃を回避する倉本。

拳が頬を掠めるだけで、摩擦で肌に焼けるような痛みが走った。

いや、事実焼けたのだろう。

皮膚が剥がれ、赤い肉が剥き出しになる。

だがそれだけでは済まない。

松岡は振り抜いた拳を引き際に、倉本のネクタイを摑む。

そのまま彼の背後へと回り込み。

「!?」

背中合わせに立って、ネクタイで倉本を絞首した!