「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」

歌舞伎町の狭い路地裏。

薄暗がりで、オルロフは壁に手をついて呼吸を乱す。

後退しかかった髪の生え際には汗が滲む。

計算外、予想外にも程がある。

巽は怪我人、しかも寝入り端の油断し切った状態だった。

にもかかわらず、拳銃まで持っていたのに仕留め損なった。

銃器に精通したこの俺が。

裏の世界で死の商人を挙げろと言われれば、まず一番に名が挙がるほどの男である自分が!

何という屈辱!

何という無様な姿だ!