そして運命は、ここに来て倉本に真実を告げる。

自身の妻、倉本 千尋を無惨に殺害した真犯人、ビクトル・オルロフ。

「自分は千尋を殺した男を目の前に追い詰めておきながら、みすみす取り逃がしてしまった…何年も追い続け、尻尾さえ摑む事が出来ず、諦めかけていた仇を目の前にしておきながら…」

語りながらも、倉本は表情一つ変えない。

違う、変えないように必死なのだ。

取り乱してはいけない。

自分は刑事であり、警察官なのだ。

私情に駆られてはいけない。

警察官は国民の平和と安寧を守る為に…。

「捕まえましょう」

美奈が座ったままの倉本を抱き締めた。