夏夜のその言葉はしっかり聞こえていたけれど、私はわざと聞こえていないフリをした。
「わたし、お手洗い行ってくるね」
「うん」
ちらりと夏夜を見てから教室を出てトイレへ向かう。
トイレの手洗い場で洗いながらさっきのやりとりについてぼんやりとか考えてみるけれど、結局は答えが出なかった。
「あ、貝崎!ちょうどいいところに」
そしてタイミングがいいのか悪いのか、
トイレから出たところを担任の西山先生に呼び止められた。
「悪いがこれを資料室に持って行ってくれないか?」
先生の手元には問題集らしきものがどっさりと乗っている。
あー…最悪だ。
(けど、断るわけにはいかないし)
結局荷物を全部受け取って資料室を目指して歩く。
この問題集らしきものは厚さと反比例してとても重い。


