「サイッテー…」
人を脅して、パシって。
慌てて走って来たっていうのに、本人がいないし。
「ほんっとにあの悪魔め…」
本人がこの場にいないのをいいことに、ブツブツと文句を垂れる。
「こんなんだったら、爽くんともっと話しとくんだったのに」
「…へーぇ?」
あ、あれ。
いま人の声、聞こえなかった?
「人のことを悪魔ねぇ」
この声…聞き間違えるはずない。
「爽くん、ねぇー」
これは、この声は…
ぎぎぎ、と後ろを振り返ると、
そこにはニッコリと笑顔をたたえたまま、腕組みをした状態で壁に背をもたれている咲間がいた。


