「んー?
生意気でも可愛い弟に頼まれたからね」
「弟……」
咲間をみると、ぷいっと顔をそらされる。
「あー、弟って恭のことだよ」
「おい姉貴、その話は後でしろ。
とりあえずは――おい田中、逃げんなよ?」
そろりと立ち去ろうとしていた田中くんの胸倉を掴んで、ぎりぎりと締めあげる。
「ぐっ……苦し、やめ……」
「ああ?聞こえねーな」
「やめ、ろ……めて、くださ」
「やめて欲しいか?」
こくこくと何度も頷く田中くん。
「わかった。
ただし、お前は今後一切こいつに近づくな。こいつに何かしたら――ぶっ殺す」
わかったらさっさと行け、と吐き捨てるように言った咲間の顔を一瞬だけ見て、田中くんはよろめきながら走り去った。


