『美瑚』



名前を呼ばれたような気がして意識が浮上する。


重たい瞼を開くと、視界に1人の男の人の顔が見えてきた。

そしてそれが誰なのかを認識して顔がこわばっていくのがわかる。



「やっと目が覚めたね」


「田中、くん……」



名前を呼ぶと目の前の田中くんはうっすらと笑みを浮かべる。



「ここは……?」


「俺のもうひとつの家ってとこかな」


ソファとテレビしかない小さな部屋。

そこをぐるりと見渡していると、体に違和感を覚える。



「ああ、それは君が逃げないようにね」


この前買っててよかったよ、と呟いた田中くんの言葉にぞくりと鳥肌がたつ。