「ようやく、ここまで来た…。」

そう、ようやくこの時が来た。

あさかの、このたった一本の髪の毛を、
この装置に入れれば…。









ああ、やっと会えた…。
「あさか…」










本物では無い、だけど、本人のDNAを元に作成されたモノ…。
「そっくり…。」

あさかのアバターの瞼が、ゆっくりと持ち上がる。
このゲームの主人公、『ユーリ』の誕生だ。








「いってらっしゃい、『ユーリ』。楽しんでね。」

アバターは再び目を閉じて、私の目の前から消えた。









「ああ…私が死ぬ前に、完成できて良かった…。」

私はとうに80を越えていた。もういつ寿命が来てもおかしくなかった。





椅子に深く腰掛け、自分の手を見る。
骨ばった、しわしわの手。もう、思い残すこともない。









少し疲れてしまった。この微睡みに身を委ねて、深いところまで沈んでいこう。






やっと、休める時が来た。