ところが。





翌日になっても、あさかは目を覚まさなかった。






そんなことはよくあることだと、みんな笑って言っていた。






だから私も安心して笑っていた。






でも、翌日もその翌日も、あさかは目を覚まさなかった。そのまま、私の入院中にあさかが目を覚ますことは無かった。






私は毎日お見舞に行った。






毎日、毎日見に行って、あさかに話しかけた。





それでも。






あさかは目を覚まさなかった。






私のギプスがとれた頃。






あさかは昏睡状態と診断された。私は高校三年生になった。あの事故から、一年が経つ。






受験シーズンになって、さすがに毎日は






お見舞いに行けなかったけど






週に3回は行くようにした。





その分、前よりたくさん話しかけた。






「あさか、受験、もうすぐだよ…。今なら間に合うから。頑張れば間に合うから。あさか、成績良かったし。だから…」





目を、覚まして。あさかは、とうとう卒業式にも出席出来なかった。






でも、皆で病室で、あさかの卒業を祝った。






「あさか、卒業おめでとう!」






みんな笑ってた。きっと、目を覚ます。






そう信じて、精一杯の笑顔で。






でも。







あさかは…。「…ねえあさか。なんで目を覚まさないの。もう、五年だよ。もう、いいじゃん。目を覚まして。」






あさかの静かな横顔は、少し痩せこけて






あの事故からの年月を物語っていた。






「…私ねえ、好きな人がいたの。告白したけど、振られちゃった。」






本当は、慰めて欲しい。






もう一度、あさかの動いてる姿が見たいの。目を開いて、動いて、笑って。






お願いだから。







「あさか…会いたい…。」






あさかの手を握る。すると。







すこし、あさかの手に力が入った気がした。





「…あさか?あさか!?」






うっすらと開いた目に、光が差した。






「あさか!聞こえる!?お、おばさん起きて!あさかが…!」眠っていたあさかのお母さんが






慌ててあさかに駆け寄った拍子に





椅子がすごい音をたてて倒れた。







「あ、お、おばさん落ち着いて!」






その騒ぎを聞きつけて、看護師さんが 駆けつけた。





先生も驚いていた。






やっと落ち着いた頃にはまた、疲れたのか、あさかは眠った。





「おやすみ、あさか…。」






今日は、記念日。






素晴らしい記念日になった。