私は、ふと気になって母に尋ねた。

「お父様には言ってあるの?」

何かあの人、この母を溺愛してるみたいだから、そんな事言ったら発狂するのではないかと思うんだけど。

「…いえ、言ってないわ。冗談でもそんな事言ったら、あの人はどうなるか…。」

ですよね。

「それにしても、貴方は冷静なのね。母親が死んでしまうというのに。」

拗ねたようにそう言うので、私はくすりと笑って正直に言った。

「だって、実感が沸かないんだもの。急にそんなことを言われても…。それに、人は、いつか死んでしまう。だから私は私なりに、悔いを残さないように過ごしてきたつもりだから。」

母はそう言った私をまじまじと見つめた。

「…なんというか、人が変わったようだわ。今までの貴方だったら、ぎゃんぎゃん騒いでいそうなものなのに。」

ぎくりとした。やはり、母は鋭い。で、でも、嘘じゃないんだよ?『ユーリ』はどうか知らないけど、私は…あさかは、そう過ごしてきたもの。

「子供の成長は、早いものなのね…。」

しみじみとそう言われると、居心地が悪い。

「そ、そうだ!お母様、明日は一緒にお茶しましょう?私、お母様ともっと話したいわ!」
「あら、そう?てっきりまた、王太子様の所へ行くのかと思っていたけど…。」

また、ってなんだ。またって。
『ユーリ』はあの王太子のストーカーだったのか?つらい。

「い、いいでしょ?流石に、お母様との時間の方が大事だもん。あれとはいつでも会えるじゃない。」
「あ、あれ…。王太子様のことを、そのように言うものではありません。不敬ですよ。全く、誰に似たのだか…。」

暗に、父に似ていると言っているな。あのオレンジ頭よりもマシだよ。流石に。

「…ふふ、まあ、いいわ。では、明日に備えて休みましょう。では、明日ね。」
「…はい、お母様。」