「ねぇ、もうやめなよ!昨日も泣いたでしょ?」



会った瞬間言われた言葉。なんで、礼美にはわかっちゃうんだろう。



大学で一番仲のいい友達、礼美。




フランス語の授業もそっちのけであたしの心配をしてくれる。



「あたしには沙桜が幸せには見えない。そんなのやだ!隼人くんも隼人くんだしさぁ!!」



そんなことを言いながら礼美は悲しい顔を浮かべた。



礼美は唯一あたしの気持ちを知ってる。
あたしと隼人の微妙な関係も。



「…うん、わかってる。」



礼美が心配してくれてるのはわかるし、礼美の言ってることは正しい。



だけどもう理屈に体と心がついていかないんだ。



隼人が誰を好きでもいい。
側にいられればいい。
突き放されて一緒にいられなくなるのが一番怖い。



だから「好き」とか「付き合う」とか確信に迫るような言葉はずっと避けてきた。



口にしてしまったらたぶん隼人は一緒にいてくれなくなるでしょ?
友達としてじゃなきゃ側にはいられない。



だから一番じゃなくてもいいの。
必要としてくれるなら。