明日私の家具が運ばれてくる頃
きっと家には何も無くなっていて
お母さんとお父さんもとうとう海外に行ってしまう。



湯船に浸かりながら
そんなことを考えていた。



いつ戻ってくるか分からないんだもん
ずっと離れ離れなのかなぁとか
色々考えてしまう。


長期休暇やお正月は戻ってくると言っていたけど
それでもやっぱり寂しいなぁと思う。






「………。」






やめやめ、こんなこと考えたって
私はこれからここで暮らして行くんだから…。




(前に進まなきゃ…。)





決まったことは変えられないんだから。






-----ガチャッ




お風呂から上がって体を拭く。

着替えを済ませて髪も拭いて
リビングへ向かった。







「…あ、お風呂上がりました。」

「はいよー。…って、ユカリ。」




---------ドキッ!


濱崎さんは私の姿を見ると
名前を呼んで立ち上がり、こちらへ向かってきた。



(え、え、え…!)





今、初めて名前を呼ばれた。

しかも、呼び捨てで。




男子と関わるのにあまり慣れていないせいか
それだけで少しドキッとした。






「あ、あの濱崎さん…?」

「ちゃんと髪の毛乾かせ。風邪ひくだろ。」





………へ。




(あ、あ〜…そういうこと…。)






ドキドキしていた気持ちを引っ込めて
私は濱崎さんに連れられて
洗面台の前に立たされる。


真後ろに濱崎さんが立っていて
身長差から顔がよく見える。





(頭一個分より差があるんだ…。)





なんて濱崎さんの身長の高さにびっくりする。

濱崎さんはドライヤーを手にして
スイッチを入れると
私の髪の毛を乾かし始めた。






「…あ!自分でやりますよ!大丈夫です!」

「いいからいいから。ちょっと俺が今やりたい気分なの。」





と私を制止させる濱崎さん。




(……濱崎さんて)




思ってた人と全然違うなぁ。

さっき家来た時は
無口で無表情で厳つくて…って
怖いイメージ並べてたけど



結構普通に喋るし。

表情はあんまり変わらないけど、優しいし。

なんか妹みたいに普通に接してくれるし…。






「俺さ、下に妹いんだよ。」

「あ…そうなんですか。」

「そう、だから何かこういうの久しぶりで懐かしくなっちゃってさ。」





なんて言う濱崎さん。

優しく微笑んでくれた。




(この人…こんな優しく笑うんだ…。)







この日の夜から

私の濱崎さんの見方が変わりました。