今日バイトが無くてつくづく良かったと思った。






現在PM1:26。

場所:BAR&RESTAURANT『felicità』







「ってお前今開店前だぞ。」

「こんなのいつものことだろ。」

「いつもって、お前それ学生の時の話だろ。」




久々に来られてもビックリするっての。



と言ってため息を吐きながら
何だかんだで俺の相手をしてくれるコウキ。

それも変わってないな。





「…で?何にお困りですかお客さん?」




そう言ってバーのカウンターに肘をついてそこに顎を乗せ
ん?と眉を上げるコウキ。

バーテンダーらしく手慣れてる感じがプンプンする。

様になってんのがちょっと腹立つな。






「…へぇ、らしくなく
余裕ない感じか?圭斗。」

「…うるせぇよ。
…わからねぇんだよ、俺も。」





そう言って頭を軽くガリガリかきながら
横に視線を向ける。

最近伸びてきた髪をうざったいと思いながらも
軽く上にかきあげて
改めて頭で考えを整理する。




-----ユカリ。





あいつは恋愛初心者で
両思いになってから
男と女がどんな風に関係を進めて行くのか

全くわかっていない。



というかそもそも恋をしていなくても
男と女がどんな生き物か

把握せず無防備に生活している。




俺が教えるべき立場なのもわかっているし、そのつもりだ。

が、







「お前、手早いもんな。」

「………。」

「あぁでも…ユカリちゃんには全く手を出せねぇんだよな。」





お前も何だかんだ本命初めてだもんなー?


とニヤニヤこっちを見るコウキ。





「っ…だからうるせぇっつの。
…あーそうだよ俺だって初心者だよ!」






…本当は

出会ってすぐに
ユカリに惚れてしまった。


最初は妹と同じような
家族愛に似た愛情程度に思っていたが

どうも…違った。





目は離せねぇわ

いつも話に出てくるハタっていう男に嫉妬するわ

でも困らせたくねぇわ

胸が苦しくなるわ……って






(---ったく俺は乙女かっ。)







「一途に思い続けて?
やっと叶ったは良いものの、
思うように心と体がコントロールできない…ってとこか?」

「………。」







悩める狼だって

いるもんです。