「い、いってきます…。」

「ん、いってらっしゃい。」





朝ごはんを食べてから
私はお弁当をカバンに入れて
椅子から立ち上がった。


早くこの2人きりの空間から逃げ出したい一心で
玄関へ向かう。


すると濱崎さんが





「……あ、ユカリ。忘れ物。」





と言った。


忘れ物…?

定期もちゃんと持ったし
お弁当もカバンに入れて
忘れ物なんて何も-----。



そう思った時に

濱崎さんが私に近づいてきて




…チュッ





と音を立てて
温かいものをおでこに押し当てた。



(………え?)






「おまじない。
…他の野郎が寄ってこないようにね。」

「っ…?!」






私のおでこに押し当てられたのは
濱崎さんの唇で。

私はおでこにキスをされ
顔を真っ赤にする。




-----ド…ドドドドド!!




心臓が速く強く鳴る。

私は恥ずかしくなって
勢い良く家を出た。




(な、な…?!)




朝からなんてことを…!

やっと落ち着けるなんて思ったのに
こんなことされたら…!!




(お、落ち着けるわけないじゃん…!!)





こんなの続いたら体がもたない…!

と思いながら
私はエレベーターで下に降りる。

















「おー、ユカリおはよう。」

「あ、ハタ…おはよう。」

「お前昨日大丈夫やった?
遅くなって怒られたんとちゃう?」





-----ギクッ





朝学校に着いてから
いつも通りハタが先についていて。

私はその質問に肩が揺れるんじゃないかと思う位
図星な反応をした。




(…え、ここで言うべきなのかな…。)





実はあのあと…
なんてやっぱり詳しくは言えないけど

昨日怒られた後に
両想いってことになりました…


……いや流れ的に違和感だよね。



でも2人には報告するべきなんだけど…
まだ言わなくていいのかな?
いやちゃんと言うべき…?






「…ユカリ?」

「え?あ、ごめん!
大丈夫だったよ!の、ノープロブレム!」

「……?」






ハタは違和感を感じ取ったように
変な顔をしていたが
私は言い出すことが出来ず

まだとりあえず黙っておいた。






「……ユカリ、お前…。」

「…え?」





ハタが私に何か言おうとした時
ちょうどいいタイミングで鐘が鳴った。






「……何でもない。」

「……?」





そう言ってハタは前を向いてしまった。