「…ハタ、どうかした?」





教室に着いて、さっちゃんがトイレに出掛けた時。

私はお互い席についたハタに声をかける。



ハタは私の顔を見てハテナを浮かべた。





「ほらさっき…ため息吐いてたから。」




と私がハタに言えば
あぁ〜…と納得したように相槌が返ってくる。

ハタは一呼吸おいてから
私に向かって話出した。





「いやぁ、何かな…上手くいかへんなぁ思うてな…。」





私は聞きながらあれのことか、と頷く。

確かにさっちゃんは鈍感っていうか
自分の事になると疎いっていうか
気持ちには確かに気づいてないと思う。


さっきも好きな人から答えを聞かれるのもなんか
少し複雑だよなぁと共感。

あっちも嬉しかったら
わざわざ理由がわかってなくてもいいって思うだろうしなぁ。






「友達止まりもなかなかキツいもんやなぁ…。」

「…うん…わかるよ…。」





私も、濱崎さんの妹的立場から
抜け出したい、と思う。

たまに本当に意識されていないのを感じると
すごい寂しくなるし、辛くなる。



ハタの気持ちが痛いほど伝わってきて
私は何度も共感の頷きをした。





「どこで意識させれば良いんだろうね。
ハタは…どんなところで女の子として意識する?」





私はハタに質問をした。

ハタは少し考えてから
私に答えを返した。





「…その時は普通に意識せず楽しく話してても、ふとその子見た時に突然

すごい女の子やなぁ思う時があるんや。

俺は…その時かな。
やっぱりこの子がええって思う。」





ハタが淡々とした口調でそう言う。

ふとした時…か。




(私も…そうなのかな。)




でも確かに私が濱崎さんを
怖いお兄さんから意識するようになったのは
不意に見せられたあの笑顔が心にきたから。


その時までは確かに何とも思ってなかったのに
ふと見せたあの顔に…やられてしまった。





「…ユカリは?どんな時意識する?」

「……私は…。」





-------ドキッ


私はハタの言葉に
ふと昨日の光景が浮かんだ。


前を歩く高い背に

抱きしめられた腕に

耳元に感じた 低い声。



思い出してもやっぱり
まだドキドキする…。






「…女の子とは骨格とか力とか
声とか全然…違うんだなぁって感じたとき、かな。

ハタの後ろ姿とかふと見た時に
やっぱり男の子なんだなぁって思うもん。」

「…ははっ。なんやねん、やっぱりって。」





その時まで俺を女と錯覚でもしてたんかいなっ

と冗談を言って笑うハタ。





「そうかぁ…。
じゃあこれからはそれを存分に発揮できるようにファイトやな!」



とハタがいつものように前向きな言葉を笑顔で言った。

元気を取り戻したらしいハタに
私は安心して笑顔を返した。

よかった、いつものハタだ。