家に着いてからも
濱崎さんの機嫌は治ることなく。

タクシーを濱崎さんが先に降りると
スタスタ歩いて行ってしまうので

私は急いで後を追う。



マンションに帰って
家の鍵を開けて中に入ると
濱崎さんは乱暴に靴を脱いでリビングに直行した。


私は濱崎さんの靴を直してから家に上がって
自分の部屋に荷物を置いてからリビングに向かう。



------明らかに様子がおかしい。



それは一目瞭然だし
帰る前から分かっていたことだけど

考えても理由が見当たらなくて。





「…濱崎さん。」





リビングのソファにドカッと座っている濱崎さんに
私はやや後ろから声をかける。


すると後ろを振り返って
口を少し尖らせた濱崎さんが「何?」と尋ねる。




(あれ…何か顔が拗ねてる…。)




やっぱり何か嫌なことでも…
と思って、私は濱崎さんに少し近づいて
顔を見ながら尋ねた。





「あの…私、何かしましたか…?」





私がそう尋ねれば
濱崎さんは少し黙って
そしてゆっくりソファから立ち上がる。


う…やっぱり怒ってる…。






「あの…何かしたなら教---」



教えてください。

私がそう言い終わる前に
濱崎さんは私の前にやってきて
黙って見下ろしたと思えば




「-------っ!」




私の両肩に腕を乗せて
私の顔を覗き込むように腰を屈めた。


必然的に顔が近くなり
酔っているせいで目が潤んでる濱崎さんと必然的に目が合う。




(-----っ‼︎ち、近っ…‼︎)





と心臓がドキドキと高鳴り
顔に熱が集まるのも感じる。

恥ずかしくて視線をキョロキョロと彷徨わせていれば
濱崎さんが静かに口を開く。




「…ユカリはなーんも分かってない。」

「……へ…。」





そう言って拗ねた顔をもう一度する濱崎さん。

え、あの…分かってないって…?