「………。」
「…こ、こんばんわ。」
夜の7時頃。
私は親に言われた通りあるマンションの
ある部屋を訪れていた。
大きな荷物を持って。
部屋から出て来た彼は
私が想像していた人物とはかけ離れている身なりだった。
髪は染めたのかと思うような真っ黒な黒髪で
横は両側剃られていていわゆるツーブロック。
他も長くはないがツンツンとした感じで
今の若者がよくやるような
少し厳つめの短髪だった。
耳には片方だけピアスが開いていて
身長も高く体格もしっかりしている。
私を知っているのか知らないのか
何とも反応せずに
いらっしゃい、と言って玄関のドアを大きく開けた。
親から話はいっているらしいけれど
彼が実際どう思っているのか
私にはさっぱり分からなかった。
「…お、お邪魔します…。」
「好きなところに座ってていいから。
荷物は俺が運んどく。」
「え、あ、ありがとうございます…。」
私から荷物を取り上げて
スタスタと廊下を歩いていく彼。
無表情で、怒っているのかわからない彼の第一印象は"怖い人"だった。

