…車の中では
当然私は何も言葉を発さなかった。



アリサさんと圭斗は
いくつか会話をしていたけど。



混乱する頭と
2人の会話を聞きたくない一心で

話を聞かないようにしていた。



ただ窓から外の景色を見ながら
無心で乗っていた。







それから1時間して
家に到着する。


荷物は全て圭斗が運んでくれて
私とアリサさんは何も持たずにマンションに入っていく。





エレベーターでは
3人とも沈黙していた。







-----ガチャッ




圭斗が鍵を開けて
アリサさんから部屋に入る。


何でお前が先に入んだよ、と
圭斗はアリサさんに怒っていたが

アリサさんはいいじゃーん!と軽く流す。

別にアリサさんが自分から1番に入ったというより
私が一歩引いてアリサさんに先に入ってもらったのだ。



…だって、彼女が本当の
彼の恋人なんだから。



私はただの…居候。






「…あ、ごめーん
友達から電話来ちゃったから外で話してくるねぇー。2人で先に話しててー。」





と、家に入るなり突然アリサさんが席を外し
圭斗と2人きりになる。






「………。」






お互いに 沈黙。






圭斗が冷蔵庫から飲み物を取り出して
コップに入れて3人分、机に置いた。



座って

とでも言われているようで
私はそれに従って
椅子に腰を下ろした。






「…突然悪いな、こんな形で会わせることになって。」





疲れてる時に悪い

と圭斗が私に言う。





「ううん…大丈夫。」





本当は大丈夫じゃないけれど

私は圭斗にそう返した。






「話は、だいたいアイツから聞いた?」

「………うん。」

「…そう。」







圭斗はそう言うと
コップに入れた飲み物に口をつけて

間を埋めるようにそれを飲む。






「……でもこうなるんなら
初めから私なんかに告白しないでよ…!」

「------ブッ!
は…?、ゲホゲホッ!」





私の言葉に
圭斗は目を見開いて飲み物に喉を詰まらせる。


私はとうとう中にしまっておいた
涙を目に溜めて、圭斗に向かって言う。





「私のこと好きなんて嘘ついて…っ!
本当は何とも思ってないのに、からかったんでしょ?!」

「ゲホッ!…は?ちょ、何言って…ゲホゲホッ!」


「ずっと圭斗のこと好きだったのに…私だけ浮かれてて、バカみたい!」






圭斗はゲホゲホッと咳き込みながら
やっと落ち着いてきたという頃に

一息ついて
私に向き直す。





「お前、何言ってんだよ!!
一体何に怒ってんだよ!」

「何に怒ってるって…当たり前でしょ?!
これでも私浮気された側なんだよ?!」

「は?!
浮気っておま…何のことだよ!!」





はぁ…?!

何しらばっくれてんのよ!

本人から話は聞いてるし
その話をしたくて昨日電話してきたんでしょ?!





「…圭斗なんて最低…!
私の気持ち…返してよ…!!」





私は目から涙を零して
何度も拭きながらも止まらない涙に
顔を俯かせた。





「ちょ、ユカ…!「ただいまー。」







と、そのタイミングで
アリサさんが電話を終わらせて帰ってくる。


そしてリビングの扉を開けて入ってくるなり

私を見てギョッとしていた。






「え…ちょっと…泣いてる?」

「っ…そりゃ元カノとより戻したなんて聞いて、傷つかないわけないでしょ?!」


「………は?」





私がヤケになって
顔を上げアリサさんをギッと睨みながらそう言うと

圭斗がは?と言葉を発した。






「元カノとより戻したって…誰と?」

「圭斗とアリサさんに決まってるでしょ?!他に誰がいんのよ!?」




私がそう言えば
圭斗が目を見開きながら




「はぁ?!アリサが元カノ?!
違ェよアリサは妹!!」




と私に告げる。

そして圭斗はそう言った後、
ハッとしたようにアリサさんへ視線を移す。






「…おい。アリサてめぇ…。」

「…あ、あは?」





圭斗が私の言葉に
アリサさんをこれまで見たことないくらいの

殺意混じりの鋭い視線で睨んだ。

アリサさんは斜め上を見ながらえへへ…なんて言いながら焦り出す。





「お前…妹だからってやっていいことと悪いことがあんだろ…?」

「ひっ…!ご、ごごごごめんなさい…!」






ポキポキと腕を鳴らしながら
アリサさんに近づき胸ぐらを掴む圭斗。

アリサさんは青ざめた顔で
ま、待って待って待って!と声をかける。





(い、もう…と……?)






アリサさんが…圭斗の…?





………。







「えぇえええぇえ?!」