とうとう飛行機が出発してしまい
席の移動は出来なくなった。




(何この状況…意味わからない…。)




まだせめて3人席にさっちゃんと3人の方が違和感なくて良かったのに

とも思いながら
私はチラッとハタを見る。






「………。」






ハタは相変わらずそっぽを向いて
静かに外を眺めていた。


しかし少ししてから
口を開く。






「…ごめんな、あんなこと言って。」






最初の言葉が これだった。


私は思わず、え。と声が出る。







「言ったこと、正直な気持ちには変わらんけど…
嘘っていうか、隠してただけやから。
これまでずっと騙すつもりでいたわけやない。」




上手く言えんけど
全部悪気は無かったんよ

びっくりさせて傷つけてごめんな。





そう言ったハタ。



その言葉に 嘘はなさそうで。

真剣に謝ってくれてるのが伝わったから
私も素直に答える。





「…ううん。大丈夫だよ、ありがとう。」






私がそう言えば
ハタは安心したように

そっぽを向いていた顔を
前に戻して、チラッと私を見た。






「…そんで、どないしたん。」

「え…?」





ハタが突然
そう私に尋ねてきた。

私が 何が? という風に瞬きをすれば
ハタが 分かってる という顔で私を横目で見る。





「…何かあったんやろ、昨日。」

「!!」





どうやら
ハタが言っているのは私のさっきの様子のことのようで。

ボーッと上の空だったのを
ちゃんと見て気にしていたらしい。






「……な、何で?」

「見てれば分かんねん。
…俺はな、親友やめたつもりないねんぞ。」




親友が親友の様子気付かんわけないやろ

なんて言いながら
フッと笑うハタ。





「それに…
今更俺らの仲に隠し事なんていらんやろ。」




お互いいろいろぶっちゃけた仲やで。

とさらに笑うハタ。






(……そっか、そうだよね。)






今までの友情は
なくなったりしないよね。



私はそう改めて思って
ハタにちゃんと話すことにした。





「……実はね
昨日の夜、電話越しに女の人の声が聞こえたの。」




圭ちゃんって呼んでて
お風呂上がったとか、誰かと話してるの?とか





「しかもあの時間だし
余計に…嫌な想像が浮かんじゃって。」






話あるって言われて
そんな声聞いちゃったら


もう別れ話しか
思い浮かばないよ…。




と私が弱音を吐くと
ハタが そうか… と言って、少し考える。





「…でもそれ、確認してないのやろ?」

「うん…。昨日の夜だし、まだ怖くて聞けないよ。」

「ちゃんと聞いた方がええと思うで。」

「………。」

「俺が見る限り、濱崎さんはそんな人やないと思ってるし
じゃないとユカリのこと任せてないわ。」






真剣に、顔色一つ変ええず
ハタが私に向かって言った。


(そう…だよね。
聞いて見ないと、何も始まらないよね。)






「もし濱崎さんが浮気してるって言うんやったら
俺が全力でぶん殴りに行く。」





フッと笑いながらハタがそう言うので
私も思わず笑った。

…ありがとう、ハタ。






「やっと笑った。
笑う門には福来たる やで。」

「うん、そうだね。
…ありがとう。」

「…おう。」






こうして私は
東京へ帰ることになりました。



3泊4日の修学旅行も
もうこれで終わり。