彼女を閉じ込めた





丸分かりの強がりを見せる彼女は、堪らなく可愛かった。
イジりたくなるに決まってる。


途切れた会話を続けようとして選んだ手段は、我ながら最悪だったが。
言い出しちまったもんは仕方が無い。



「分かりやすく固まってんじゃねぇよ。免疫無ぇんだろ?」


「な、ななな何言ってるんですか。有りますってば!」


「メチャクチャどもってんじゃねぇか」


「常識外れの提案に舌まで石化しそうなんです!」


「じゃあ柔らかくしてやるよ」


「結構です!」


「キスハグは日常ちゃめしごとなんだろ。挨拶だよ挨拶」


「……」



許せよ。これは売り言葉に買い言葉ってやつだ。
だって俺が触りたい。その赤く染まった耳にも、柔らかそうな髪にも、…出来れば桜色のその唇にも。


彼女の優しい頬のまろみに触れた手を、静かに滑り下ろす。
癖の無い髪を指で掻き分けて、耳に掛けてやった。


たったそれだけの動きで、彼女が息を詰め、身を強張らせるのが分かる。
はっきり露出した耳殻は染まっていて、まるで桜貝のように可憐だ。


その耳に唇を寄せて、囁きを落としてやろう。



「賭けをしようぜ。今から俺が何をしても、お前が堪えられたら。
 そしたらお前の言うこと、何でも一つ聞いてやる」