恋と青春と空模様



途方に暮れて、生徒玄関を出たすぐの屋根のところから雨が降る淀んだ空を眺めていると、



「おー雨じゃん」



後ろからさっき教室で聞いた声が聞こえた。

逢坂くんだ。



逢坂くんは、そのままわたしのことを気にもせずに屋根のところで傘を広げ、雨の中に足を踏み出した。



ぴちゃんと地面に溜まった水がはねる。



逢坂くんが傘をさして歩いていくのを無意識に目で追っていると、彼の足がふと止まった。




…?



不思議に思っていると、逢坂くんはくるっとこっちを向く。




目が合った。





慌てて目線を反らす。


…な、なんだろう…。







少しの沈黙を経て、逢坂くんはゆっくり口を開く。




「山科って瑞駅?」

「えっ?」



瑞駅とは、学校から最寄りの、公立瑞葵高等学校前という駅の略称。

そして、わたしが家に帰るために電車に乗る駅だ。



わたしはその問いにコクンとうなづく。



すると逢坂くんは思いもよらないことを言い出した。














「俺も瑞駅の方行くんだけど、入ってく?」