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「もう暗くなっちゃった…」
時刻は6時45分すぎ。
まだ自主をしている人や部活をしている人でもいるのか、廊下や教室はところどころ電気が点いていた。
1年A組は…点いていない。
パチ。
電気を点けて教室の奥の隅の自分の席に向かう。
えっと数学の教科書…は…。
「あっ、あった!」
「山科?」
「へっ?」
わたしが教科書を見つけて立ち上がった時誰かが、山科?、と、聞いた。
えっと…山科…って、わたしのこと…だよね?
山科なんてそういる苗字じゃ、ないし…。
そもそもこの教室わたししかいなかったはずだもん。
いや、わたしの後に実は別の山科さんが…。
なんてことを考えて、振り向こうか振り向かないでおこうかわたわたと迷っていると、もう一度さっきの声が聞こえた。
今度は、こちらの様子を伺うように怪訝そうな声色だ。
「山科?」
うん。
これはきっとわたしのことだ。
「はっ、はいぃ!」
そう思い切って振り向くと、わたしはびっくりして教科書をドサッと落としてしまった。
「えっあわ…!」
慌てて教科書を拾って腕に抱える。
振り向いたそこにいたのは、
「逢坂…くん…」
あの、
憧れの陽の光のような人だった。

